【開催レポート】浜のからあげが運んだ、シンデレラストーリー。 |FUTURE × COLORS #5
- 6月26日
- 読了時間: 9分

6月10日に開催された「FUTURE×COLORS #5」では、「たまげた家」オーナーの菅野さんをゲストに迎え、「 “浜のからあげ”がつくる笑顔とまちの未来 」をテーマに語り合いました。
会場は、たまげた家の店内。普段の定食屋からトークセッション会場へがらりと雰囲気を変え、揚げたての美味しそうな香りがふわりと漂う中、浪江で暮らす方々や「たまげた家」常連のお客さんが集まり、熱いお話をお伺いする時間となりました。
本レポートでは、当日のセッションのハイライトをお届けします。
海外での挑戦と、浪江との出会い

—— まずは、これまでの歩みを教えてください。
菅野喜直さん(以下、菅野):福島県川俣町の出身で、18歳で上京しました。最初はサービスエンジニアとして働いていて、海外出張が増える中で“海外で暮らしてみたい”という気持ちが強くなっていったんです。
25歳で会社を辞めてイギリスに留学して、そこからオーストラリアへ。このあたりから人生が狂ってくるんですけど(笑)ワーホリや学生ビザを使いながら約10年、いろんな国で生活しました。現地の生活習慣や文化に触れるのが楽しくて、住んでみないと分からないことにどんどん惹かれていきました。海外での経験は、自分の価値観を大きく変えてくれました。
——浪江に来たきっかけは?
菅野:コロナで帰国を余儀なくされて、“震災の時に海外にいたため、自分ができることで何かサポートできないか”と思ったんです。 求人を見つけて、2020年に浪江のビジネスホテルのオープニングスタッフとして働き始めました。
宿泊業を通して、浪江に来る人・働く人・暮らす人の姿を間近で見て、“この町で何かしたい”という気持ちが強くなっていきました。
チャレンジショップ、キッチンカー、そして常設店舗へ

——飲食の道へ進んだのはどんな経緯があるのでしょうか?
菅野:レストランスタッフをやっていた海外生活の中で、「衣食住の中で“食”は絶対になくならない。そして日本食はどの国に行っても求められる」と感じたのが大きかったです。
2020年に日本に帰ってきた直後、車で国道6号線を走っているとき、たまたまお昼を食べに来たのが、当時「まち・なみ・まるしぇ*」で営業をしていた「くろさか」さんでした。
そのときめちゃくちゃ混んでいて、お客さんがずーっと並んでいるんですよ。「浪江町すごいじゃん!飲食はこんなことになっているのか」と衝撃でした。
その後、浪江のホテルで働いているときに、「くろさか」さんと同じテナントで1年間限定のチャレンジショップの募集を見つけ、また飲食をやりたいとひそかに思っていたので、真っ先に応募させていただきました。
チャレンジショップで定食屋を始めた時、一番人気だったのが唐揚げでした。せっかくやるなら、地元の食材でここだけのオンリーワンをつくりたいと思って、浪江町のブランドにんにくのサムライガーリック、浪江町の酒蔵・鈴木酒造さんの酒粕、そして同じ浜通り地域の相馬市で震災を乗り越えて長く続けられている山形屋さんの醤油を使って、浜のからあげをつくりました。原価はかかるけど、地域の味を届けたいという気持ちが強かったですね。
※「まち・なみ・まるしぇ」とは
浪江町役場の隣接地に整備された仮設商業施設。帰還する町民や準備宿泊者の生活を支えるため2016年にオープンし、現在は新規出店を支援するチャレンジショップとして活用。
——キッチンカーを始めた理由は?
菅野:チャレンジショップが1年で終わって、惜しまれつつ退去しました。でも“続けたい”という気持ちがずっとあって。ちょうどその頃、イベントでキッチンカーを製作している車屋さんと知り合い、「委託販売しているキッチンカーがあるので見てみませんか」と連絡をいただいたんです。それが今のキッチンカーです。お店が閉まるのが2022年8月で、その話をいただいたのが7月頃。ほぼ即決で購入を決め、唐揚げを揚げられるよう設備を整えてもらいました。
お店が閉まるのとほぼ同時にキッチンカーで営業できる状態になり、どうしても出たかった9月のイベントにも間に合いました。しかもキッチンカーが完成したのはイベントの前日。
本当にすべてが不思議なくらいスムーズにつながっていった、まさにシンデレラストーリーでした。
——今年1月に浪江駅前に店舗をオープンされましたね。どんな想いから常設店舗を構えることになったのでしょうか?
菅野:キッチンカーで浜通りや福島県内を回る中でも、「いつかまたお店をやりたい」という思いはずっと持ち続けていました。
そんな中で出会ったのが、再開発が進む浪江駅前にあるこの物件です。実はこの建物も、取り壊すか残すかの検討が続けられていましたが、最終的に残されることになり、店舗として入居できることになりました。キッチンカーを始めたときもそうでしたが、今回もさまざまなタイミングやご縁が重なり、一つひとつのバトンがつながっていくような、まさに運命のリレーの末に実現した店舗オープンでした。
キッチンカーと違って店舗はずっと“ここ”にいられるので、駅前なら帰省した人も、仕事帰りの人も、気軽に立ち寄れる。今はキッチンカーと店舗の二刀流で頑張っています。チャレンジショップ時代に来てくれたご夫婦が、今は子どもを連れて来てくれるようになって。そのストーリーを身近に感じられて、お店も一緒に成長していきたいなと思っています。
暖かくなるこれからの季節は週末を中心にイベントも増えてくるので、「キッチンカーで出店してほしい」というお声をたくさんいただきます。一方で、「お店にご飯を食べに行きたいけれど、週末しか行けない」というお客さまの声もあって、今はその両立に葛藤しているところです。
キッチンカーでつながったご縁も大切ですし、お店で新しく出会うお客さまとのつながりも大切にしたい。どちらもやりたいし、どちらも大事にしたい、欲張りなんです(笑)
“浜のからあげ”をふるさとの味に

——これから、どんな未来を描いていますか?
菅野:最近、子どもたちが唐揚げを買いに来てくれるのを見ると、“この味がふるさとの味になったらいいな”と思うんです。浪江を離れても「たまげた家の唐揚げ、また食べたいな」って思ってくれたら嬉しい。「変わらないね」って思えるあたたかみ・安心を届けたいです。
駅前に店を構えたのも、帰ってきた人が「あ、今日もヒゲの店長いるね」って言えるような場所にしたかったから。 いつか、浪江で育った子どもたちが大人になって、自分の家族を連れて帰ってきた時に、「ここがたまげた家だよ」って言ってもらえるような店にしたいです。
参加者の声・会場の様子
会場では、海外の経験から浪江での挑戦が一本につながっていくストーリーに驚きの声が上がり、地域や家族への熱い想いのお話にじんわりと胸が温かくなる参加者の姿が見られました。

——「たまげた家」の店名の由来はなんですか?(参加者)
菅野:私がオーストラリアで店長を務めていたお店の名前が「たまげた家」でした。今のお店と似たような造りで、カウンター席とテーブル席がある小さなお店でした。
実はそのお店は売上があまり良くなく、なんとか社長に「頑張っているな」と認めてもらいたいという思いで、4年間ほぼ休みなく、朝から晩まで必死に働いていました。自分なりにそのお店に精一杯尽くし、人生の中でも真剣に向き合った場所だったと思います。
だから、自分がお店を持つなら「たまげた屋」という名前を使いたいと思っていました。チャレンジショップを始める際に当時の社長へ相談すると、「そんな名前でいいの?」と笑われながらも快く了承してくださって。それで今の店名にさせていただきました。
ちなみに「たまげた」は、“びっくりする”という意味の「たまげる」から来ています。「お客さんを驚かせたい、喜ばせたい」。そんな思いも込められた名前なんです。
——従業員の皆さんとわきあいあいとお店をやられている印象があります。仕事をするうえで大事にしていることはありますか?(参加者)
ランチ営業は地域のお母さん方にパートで入っていただいて一緒にお店をやっていますが、まずは人生の先輩としてのリスペクトを持つことを大切にしています。 自分も最初から何でもできたわけじゃないので、どうしたらこの人が喜ぶか、どうしたらスムーズに仕事ができるかを考えてサポートしてきました。 そうすると、相手も“いつもありがとう”って返してくれる。ギブアンドテイクが自然に生まれるんです。
困っていたら先に助ける。 もし自分が困ったら、手伝ってもらえたら嬉しい。 そのスタンスでやっています。

トークセッション後は、菅野さんが用意してくださった料理を囲みながら、たまげた家の店内で参加者同士が思い思いに語り合う時間となりました。
参加者からは、
「浪江の食材を使うことに尽力してくださっていることを知り、ますます応援したくなりました」
「“子どもたちが帰ってきた時のふるさとの味にしたい”という言葉が素敵でした」
「人の活かし方の話が共感できた。菅野さんの明るさが周りを動かしているんだと感じた」
といった声が寄せられ、共感の輪が広がっていきました。
美味しい食べ物と参加者の笑い声が混ざり合う店内は、まさに“浜のからあげ”がつくる新しいつながりの場そのもの。 浪江町の未来が垣間見える、熱い夜となりました。
次回予告|あなたも浪江の「未来」を彩る仲間になりませんか?
次回もトークイベント「FUTURE × COLORS #6 浪江で挑戦する“あの人”とつながる夜」を開催予定!詳細は後日お知らせしますので、ぜひメンバー向けメールマガジンや公式SNSをチェックしてください。
登壇者プロフィール
<ゲスト>
菅野 喜直 さん(たまげた家オーナー)
福島県出身。海外での勤務・留学を経て、東日本大震災を機に故郷への想いを強める。「食で地元に元気を届けたい」と2022年に創業。地元食材を活かした「浜のからあげ」を通じ、地域の魅力と人のつながりを広げながら挑戦を続けている。
<聞いてみる人>
大橋 未来さん
北海道札幌市出身。北海道に本社を置く企業で約5年間広報を担当。2023年から二拠点生活を開始し、2025年6月に浪江町に移住。最近、北海道に住む母が初めて浪江町に遊びに来たので、たまげた家に連れて行った。
FUTURE × COLORSとは
「FUTURE × COLORS」は、2025年10月よりナミエシンカで新たにスタートした、トーク形式のコミュニティイベントです。地域で挑戦する人の“色(COLOR)”に触れ、その背景にある物語や価値観を共有することで、浪江の未来の可能性を一緒に描いていこうという思いから生まれました。
活動の裏話やこれからの野望を語りながら、まちを動かす人たち・これから活動したい人たちがつながる場をつくっています。
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