【開催レポート】震災から“まだ”15年。地域を守り、つないでいく神社の役割。|FUTURE × COLORS #6

9月16日に開催された「FUTURE × COLORS #6」では、初發神社 禰宜の田村さんをゲストに迎え、「神社とお祭りの復活からつくるまちの未来」 をテーマに語り合いました。
神主の装束をまとった田村さんを囲み、会場にはどこか神聖な空気が流れるのを感じながら、 一つひとつの言葉が静かに胸に届くセッションとなりました。
本レポートでは、当日のトークのハイライトをお届けします。
震災後の神社と再建に向けて

——まず、田村さんが務めていらっしゃる禰宜(ねぎ)とはどのような役職なのでしょうか。
田村貴正さん(以下、田村):神社では、宮司・禰宜・権禰宜・出仕という役職があります。会社で言う肩書きみたいなものですね。宮司が神社のトップで、その次が禰宜です。うちは規模が小さいので、父が宮司で、息子である私が禰宜。二人しか神主がいません。代々田村家で受け継いできて、私で6代目になります。浪江町内には32の神社があり、そのうち12社をうちが代表役員のような形で受け持っています。神社の維持管理は地域の皆さんが担っていただいています。
——代々守ってきた神社ですが、震災直後はどのような状況だったのでしょうか。
田村:震災のときは、もう余裕なんてなくて、とにかく避難するしかありませんでした。一時帰宅で戻ったときに初めて神社の状況を見たんですが、社殿が大きく傾いていて、倒壊寸前でした。後ろ髪を引かれながら写真だけ撮って、また避難しました。
その後、規制が少しずつ緩くなってきた頃に、地元の大工さんにお願いして、倒れないように支え柱を入れてもらいました。解除になるまで、なんとか持ちこたえたという状況でした。

——再建に向けて、どのように動き始めたのでしょうか。
田村:避難指示解除が見えてきた頃、真っ先に神社の再建のことが頭に浮かび、10年先までの計画を立てました。文化財指定を受けている本殿は、修復にもいろいろな制約がありますし、資金も必要です。町や県の協力をいただきながら、少しずつ準備を進めました。
ただ、神主の思いだけで再建しても意味がないんです。神社は地域の共有財産であって、田村家のものではありません。だから、地域の皆さんと一緒に、神社をどうしていくかを一緒に考えたいと思いました。
まずは仮設住宅を一軒ずつ回って、世間話をすることから始めました。最初はもちろん神社のことなんて皆さん考えられない状況でした。でも、だんだんと生活に余裕が出てきたタイミングで、「初發神社と(同じく幾世橋地区にある)大聖寺を再建しよう」という声が上がってきたんです。その言葉が本当に嬉しくて、ようやく一緒に前へ進めると思いました。
そこから社殿の修復、社務所の建て替え、手水舎の再建と、少しずつ形にしていきました。
地域コミュニティの“核”としての神社
——田村さんは初發神社だけでなく、浪江町内の様々な神社の再建やお祭りの復活にも関わっていらっしゃいますよね。
田村:樋渡(ひわたし)・牛渡(うしわた)地区の八坂神社が震災で崩れてしまったときの写真を初めて見たときは本当に衝撃的でした。屋根が重かったんでしょうね、もう耐えきれなくて、ぺちゃんこに潰れてしまっていました。うちが持っている神社の中でも被害が一番大きくて、私も衝撃を受けました。でも地域の皆さんが本当に一生懸命で、「なんとか神社を盛り上げよう」という思いで動いてくださった結果、再建ができました。
他にも、請戸地区の苕野(くさの)神社。震災の津波で基礎だけを残して全部なくなってしまいました。震災後の状況も踏まえ、私が奉仕を担いながら、とりあえず再建を進めて、このように立派な社殿になりました。
震災後も、社殿ができる前から伝統の「田植え踊り」を一生懸命続けていて、十代の若い踊り手の方が『これを続けることで、自分が請戸の人間だと自覚できる』と言っていたことがとても印象に残っています。何もなくなった状況の中でも地域の伝統を守っていく思いを持ち続ける方々を見て、私も苕野神社を再建しなければならないと思い、宮司になる覚悟を決めました。竣工祭の日には、もともと請戸に住んでいた方々もたくさん戻ってきて、お祭りを盛り上げてくれました。

——震災の前後で変化したことはありますか?
田村:震災前は、神様にご奉仕することが仕事で、当たり前のように神主としての務めを行っていました。でも震災があって、今まで当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなくなったんです。 そんな中、神主・神社としてどうあるべきか改めて考えるようになりました。
もともと神社は地域コミュニティの中心でした。震災でコミュニティが強制的にバラバラになってしまった中、神社は戻ってきた人が顔を合わせられる場所になっていく様子を見て、神主としてふるさとを復興させたいという思いが強くなっていきました。
神社だけでは何もできません。氏子の皆さんや支えてくれる皆さんの協力があってこそ、神社は成り立ちます。
不易流行 ― 伝統を守り、新しいことを取り入れながら次の世代につなぐ

——これから、神社の形はどうなっていくと思いますか?
田村:これからの神社の形は、町の復興と深くリンクしていくと思っています。移住者の方や企業が入ってきて新しいことが増えていく一方で、浪江町として守らなければならないのは、地域の伝統文化や神事芸能です。それらを守り、先導し、人々を元気にすることも神社の大切な役割ですし、震災で途切れたものもありますが、復活したものもあります。そうした文化を次の世代につないでいくことが、神主としての務めだと感じています。
私は“不易流行”という言葉が好きで、変わらないものを守りながら、新しいことも取り入れていく姿勢が大事だと思っています。震災から“まだ”15年。日本の長い歴史から見ればほんの一部です。先人たちが歴史をつないできたように、今の私たちも長期的な視点で次へつないでいかなければなりません。担い手が減っている状況の中で、本当に危機になるのはこれからの10年、20年だと思っています。
だからこそ、移住者の方にも氏子区域に関係なく、地域の文化に関わっていただけたら嬉しいです。お祭りや行事に参加することで、これからも神社に関わり続けてほしいと思っています。そうやってつながり続けていくことが、浪江の復興にもつながると感じています。
参加者の声・会場の様子

——初發神社の御祭神はなんですか?(参加者)
田村:うちの御祭神は「天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」です。古事記の冒頭に一瞬だけ出てくる神様で、初めに現れた神様と言われています。
神社の神様にはそれぞれ御神徳がありますが、うちは“これが専門”というものはなく、交通安全から受験、厄除けまで幅広くご祈祷します。一般的には、菅原道真公を祀る天神様なら学問、八幡様なら武運というように“推し”がある神社もありますが、うちは特定のご利益を前面に出しているわけではありません。どんな願いでも受けます。
——初發神社には「ライダーズ神社」ののぼりがあると思いますが、あれはなんですか?(参加者)
田村:ライダーズ神社は、今の時代の神社の危機感から始まった取り組みなんです。こんな田舎の神社には人がなかなか来ませんし、神社の維持管理にはお金もかかります。神社の収入はお札やお守りの頒布、ご祈祷、地鎮祭、公共工事の安全祈願祭などですが、震災後はそれも難しくなりました。
そんな中で、バイクのツーリング団体の方たちとつながりができて、「浜通りをツーリングする人たちのスポットとして神社を巡れるようにしたい」という話をいただいたんです。そこで、いわきの國魂神社・三島神社、相馬中村神社、そしてうち初發神社の4社で手を挙げて、ライダーズ神社としてのぼりを立てたり、お守りやステッカーを作ったりしました。
バイクの神様を祀っているわけではありません。交通安全のご祈祷をする神社として、バイクの方たちにも来ていただけるようにした取り組みです。神社も今は発信していかないと人が来ない時代ですし、若い神主も危機感を持って新しいことに挑戦しています。昔は「そんな横文字は入れるな」と言われましたが、今は神社がなくなる時代でもあります。維持管理ができずに廃社になる神社も増えていて、双葉郡でも合併してなくなった神社があります。
だからこそ、新しい取り組みにもどんどんチャレンジして多くの人に来てもらい、地域にお金が落ちて、神社が続いていく仕組みを作ることが必要なんです。もしかしたら将来、自転車神社ができるかもしれませんね。
『ライダーも注目する福島県・浪江町の名社』(旅色神社仏閣めぐり)

トークセッション後は、「会社のみんなで年頭参拝に行きたい」という相談から、田村さんのプライベートのお話まで、神主さんとお話ができる貴重な機会にそれぞれ思い思いに会話を楽しみました。
参加者からは、
「普段あまり聞くことができない神社の内情など、どれも新鮮な内容でした。」
「神社の地域の役割について、“つなぐ、つないでいく”という言葉が印象的でした。」
「神社の役割や氏子コミュニティの大切さを感じながら、自分も関心をもってお祭りなどに参加することから始めたいと思います。」
といった声が寄せられ、神社がより身近になったという方が多くいらっしゃいました。
温かい会話と笑顔が交わされる会場は、 まさに“神社がつくる新しいつながり”が生まれる場所。 浪江町の未来がそっと垣間見える、豊かな夜となりました。
次回予告|あなたも浪江の「未来」を彩る仲間になりませんか?
次回もトークイベント「FUTURE × COLORS #7 浪江で挑戦する“あの人”とつながる夜」を開催予定!詳細は後日お知らせしますので、ぜひメンバー向けメールマガジンや公式SNSをチェックしてください。
登壇者プロフィール
<ゲスト>
田村 貴正さん(相馬妙見宮 初發神社 禰宜)
浪江町北幾世橋地区の初發神社で、6代続く神職の家系に生まれる。
東日本大震災で被災した社殿の再建に尽力し、地域の心の拠り所を守り続ける。請戸地区の伝統行事「安波祭」の神事や、出初式での祝詞奏上を担うなど、浪江に受け継がれてきた伝統文化を守りながら、新たな賑わいの創出を目指して町の復興に力を注いでいる。
初發神社公式HP: https://shohatujinja.com/
<聞いてみる人>
大橋 未来さん(ナミエシンカ公式アンバサダー)
北海道札幌市出身。道内に本社を置く企業で約5年間広報を担当。2023年から二拠点生活を開始し、2025年6月に浪江町に移住。浪江駅周辺の姿は変わっていくけれど、「変わらないもの」のヒントは神社にあるはず、と思っている。
FUTURE × COLORSとは
「FUTURE × COLORS」は、2025年10月よりナミエシンカで新たにスタートした、トーク形式のコミュニティイベントです。地域で挑戦する人の“色(COLOR)”に触れ、その背景にある物語や価値観を共有することで、浪江の未来の可能性を一緒に描いていこうという思いから生まれました。
活動の裏話やこれからの野望を語りながら、まちを動かす人たち・これから活動したい人たちがつながる場をつくっています。
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